2012年05月19日

[日本人に宛てたエッセイ61〜南十字星から西東京へ]

西東京の皆様、今晩は。一昨年春から南国シンガポールに赴任している、心はいつまでも西東京市民、岡川です。私は現在金融アナリストとして働きながら、その仕事を通じて見えてくるアジア各地様々な横顔を、赤道直下熱帯の国からお伝えしています。
先日、私は3ヵ月ぶりにインドネシアを訪れました。名物の交通渋滞やスモッグ、入国審査の待ち時間などは目に見えて悪化しており、ジャカルタは相変わらず各種社会インフラに問題を抱えている首都ではあります。しかし目覚めた2億4千万という若い人口が、ASEAN1とも云える熱気をますますヒートアップさせていることもまた事実です。出張2週間前トライしたにもかかわらず、フライトが予約待ちだった点は、いかに外国からも熱い視線を送られているかの証左でありましょう。
今回、私は現地のナショナルスタッフと何度か行動を共にする機会がありました。ジャカルタ市内の移動は、シンガポールやバンコクのように地下鉄や都市内高速鉄道が発達しているわけでは無いので、車が中心です。しかし最初に申し上げました通り渋滞がひどいので、結果車中で長い時間過ごすことになります。そこで私は、日本人ではなかなか伺い知ることのできない最新のインドネシア情勢について、色々とヒアリングすることができました。私の本業の政治や経済のことはあまり面白くないので、本日はインドネシアのエンタテイメント情報をひとつ、お伝えしたいと思います。先ほどお話しした現地スタッフと、商業ビル内にあるオフィスを訪問した時のことです。低層階のショッピングセンターには、あちこちベタベタと、ピンクを中心とした女性アイドルグループのポスターが貼ってありました。興味を持った私は、彼女らがなんというグループで、どのくらい人気があるのか尋ねました。答えは、昨年オーディション番組で誕生したチェリー・ベルという9人組で、今一番急上昇しているグループだそうです。結成1年あまりで、最年長2人が早々に卒業、現在追加オーディションが話題になっているとのこと。どうもこのシステム、どこかで聞いた話のようですが、その辺は気にしてはいけません。そのスタッフ曰く、ご多分に漏れずインドネシアでも大人気のK-POPとは違い、衣裳やパフォーマンスなどは、クールではなくカワイイを前面に押し出しているそうです。
ホテルに帰って彼女らの動画をチェックしてみましたが、確かにビートが効いてガンガンというわけではなく、ソフトなポップナンバーでした。ピンク色のふわふわとした感じは、確かにJ-POPっぽいと言えなくもありません。K-POPに完全に蹂躙されてしまった感のある東南アジアの音楽環境ですが、インドネシアでは必ずしも全員が全員K-POPを評価しているわけでは無いとそのスタッフは何故か熱く語っていました。確かにJKT48のデビュー曲を、鼻歌で唄っている人をジャカルタのオフィスで見掛けた時は、ちょっとそうなのかな、と思ったりもするのですが。
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2012年05月12日

[日本人に宛てたエッセイ60〜南十字星から西東京へ]

西東京の皆様、今晩は。一昨年春から南国シンガポールに赴任している、心はいつまでも西東京市民、岡川です。私は現在金融アナリストとして働きながら、その仕事を通じて見えてくるアジア各地様々な横顔を、赤道直下熱帯の国からお伝えしています。
先日土曜日、中学生の末娘と近くにあるシンガポール最大級のショッピングセンター、その名もヴィヴォ・シティに足を運びました。ここは伊東豊雄(とよお)さんという日本人建築家の方が設計された、3階建ての巨大な建物です。中には世界中のあらゆるブランドショップをはじめとして、スーパー・レストラン・映画館等たくさんの施設が詰まっています。もちろんおもちゃ屋もあり、末娘はそこで買える日本のキャラクター製品がお目当てだったわけです。
彼女がキャラクター商品を物色している間、私もこれまた広大なおもちゃ屋をぐるりと散策して回ったのですが、ほどなくしてあることに気付きました。店の中は大勢の子供たちで溢れているのですが、中国人、いわゆる華人の子供は少なく、圧倒的にインド人やマレー人、インドネシア人の子供たちが多いということにです。シンガポールは多国籍社会とはいえ圧倒的に華人が多く、およそ7割が中華系、残り3割がマレー系やインド系など他の民族と言われています。しかしながらそのおもちゃ屋にいた子供の民族比率は、明らかに逆転しているように見受けられました。
シンガポールは女性の社会進出が積極的であることからか、一人の女性が生涯に産む子供の数、いわゆる特殊出生率がたいへん低い国です。実はその数1.2人と、少子高齢化が叫ばれる我が国の1.4よりも低いのです。私もこの数字は将来いろいろと問題になるのだろうなあ、と漠然と考えていたのですが、おもちゃ屋の風景を見ながら、もっとシリアスな点にも気づいてしまいました。それは、中華系民族に限って言えば、この特殊出生率はもっと低いのではなかろうかという点にです。1.2という数字が、もしマレー人家庭やインド人家庭子供の数に支えられているのだとしたら、中華系民族夫婦の出生率はもっと低いに違いありません。例えば特殊出生率が1を切る事態ともなっていたら、1世代経るごとに、その民族の人間の数は単純に半減してしまうのです!
シンガポールはなんだかんだ言って華人たちが彼らの思想をベースとして構築していった国際都市国家です。しかしその民族構成が今後、どんどん変わっていくのだとしたら、きっと国家思想の根幹も変革を迫られていくのでしょう。それが合否どのような結果をもたらすのか、単一民族に近く/変われない我が国からは想像は難しいのですが、きっとドラスティックなものになるであろうと想像してみるのです。
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2012年05月05日

[日本人に宛てたエッセイ59〜南十字星から西東京へ]

西東京の皆様、今晩は。一昨年春から南国シンガポールに赴任している、心はいつまでも西東京市民、岡川です。私は現在金融アナリストとして働きながら、その仕事を通じて見えてくるアジア各地様々な横顔を、赤道直下熱帯の国からお伝えしています。
夏です。常夏と思われているこの島にも、なんと夏と呼ばれる季節がやってきました。赤道直下の国にも夏があるのだと、赴任して初めて知ったわけなのですが、例年乾季のど真ん中、4月から6月までがシンガポールでは一番暑い時期です。別にカラっと晴れるわけでもなく、スコールも頻繁に降りますが、朝晩でもムシムシしてくると「ああまたこの季節か」と思う訳です。この暑さのためか、こちらの学校は6月がお休みです。もちろん夏休みと言わず、ミッドイヤーホリデイといって、飛行機の値段も上がります。私の娘たちの通う日本人学校は、日本のカレンダーで周っていますので、残念ながら6月はお休みにはなりません。
一昨年4月の赴任時には、なにぶん熱帯モンスーン気候を舐めていましたので、閉口することもたびたびありました。休日に借家を探すため不動産屋と歩き回った時、汗がとめどなく流れて、早くホテルに帰ってシャワーを浴びたいと切に願った記憶もあります。その頃はクーラーをつけっぱなしにしないと眠れなかったのですが、慣れとは不思議なもので、最近では窓を開けるだけで眠れるようになりました。それでも5月に入ってからは、さすがにそれでは眠れないと夜中に何度かクーラーをつけましたので、やっぱり夏は夏なのです。
しかし直射日光が強烈なのに、「酷暑」とならないのは、何故なのかいつも疑問に感じながら生きています。ここに来てから、35度以上という気温には、あまりお目に掛ったことがありません。8月に私の両親が日本からやってきた時、シンガポールはなんて涼しいのか、と感動していました。面白いのは天気予報で、携帯電話のアプリケーションを立ち上げると、この先1週間毎日晴れで、毎日最低気温26度/最高気温31度という文字が並びます。あまりにも日々変化が無いので、日本と違ってシンガポールの人たちと、天気や気温が話題になることはほとんどありません。私も折りたたみ傘を持ち歩く習慣をすっかり忘れました。

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2012年04月29日

[日本人に宛てたエッセイ58〜南十字星から西東京へ]

西東京の皆様、今晩は。一昨年春から南国シンガポールに赴任している、心はいつまでも西東京市民、岡川です。私は現在金融アナリストとして働きながら、その仕事を通じて見えてくるアジア各地様々な横顔を、赤道直下熱帯の国からお伝えしています。
先日、地元の新聞を読んでいたら、なんと1面に日本に関する記事が出ていました。それも、政権交代や天災など、日本でもトップで報道されるニュースではありません。その記事のタイトルは、「フライドホッケンミー、原宿で売り出し開始」というものです。日本ではあまり報道されなかったためか、私もこちらの新聞で初めて知りました。日本に関する記事を、シンガポール経由で知ったのは、この2年で初めてのことです。
ところでフライドホッケンミーとは、シンガポールやマレーシアでポピュラーな、福建風海鮮焼きそばのことです。高級料理ではなく庶民の味で、レストランというよりフードコートやホッカーセンターの屋台で売っているのを良く見かけます。シンガポール料理の中では、どちらかというと癖のない味をしているので、子供さんやアジア初心者の方にも安心して召しあがっていただける料理です。作り方としては、まず白いお米の麺と黄色い玉子麺をブレンドし、そこにエビ・イカ・青ネギ・にんにく・もやしを入れて、大きな中華鍋で豚骨スープとともに煮込みます。スープが無くなってきたら、玉子を溶き入れ、とろみをつけて完成。ライムを絞り、サンバルという辛いエビ味噌をつけながらいただきます。スープのほとんどない、ドライタイプの日本のソース焼きそばとは違い、見た目や食感は長崎ちゃんぽんに似ています。それもそのはず、フライドホッケンミーも長崎ちゃんぽんも、中国福建省にその起源をもつ姉妹料理なのです。
記事によれば、原宿にヤックマンという日本初のフライドホッケンミー専門店を開店した社長、小島限無(げんな)さんは、約1年前から日本誘致を計画。シンガポール1の有名焼麺屋「泰豊(タイフォン)」のオーナーと合弁会社設立の交渉に成功、社長自身2か月の実地訓練を経てこの4月、開店にこぎつけました。なぜ原宿を1号店オープンの場所に選んだかというと、「何か新しいことを始めるにはいい場所だと思ったからです。原宿では勝者と敗者の差がはっきりと出る。勝者になれば、もっと遠くに行ける」と思ったからだそうです。またタイフォンのオーナーは、2年以内にもう5店新規展開したいと、日本市場に熱い期待を寄せています。この記事を読んでその夜、私もたまらず近くのタイフォンにフライドホッケンミーを買いに行ってしまいました。ヤックマンは新しくできた東急プラザ表参道原宿の裏手、神宮前4丁目にあります。休日のお昼でも、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
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2012年04月21日

[日本人に宛てたエッセイ57〜南十字星から西東京へ]

西東京の皆様、今晩は。一昨年春から南国シンガポールに赴任している、心はいつまでも西東京市民、岡川です。私は現在金融アナリストとして働きながら、その仕事を通じて見えてくるアジア各地様々な横顔を、赤道直下熱帯の国からお伝えしています。
シンガポール赴任も2年を超え、食べたことのないローカルフードはもう無いと思っていた先日、隣の席の若いシンガポール人男性が持ってきたグルメ本をぱらぱらとめくっていたところ、聞いたこともない料理を見つけてしまいました。その名もサンダーティーライス!なんだかやたら強そうな名前です。本の持ち主に聞いてみると、彼自身も食べたことないとの由。調べてみると歩いて7〜8分のフードコートに店がある、とのこと、早速その日の昼食はそのサンダーティーライスなるものを買いに行きました。持ち帰り弁当のお値段は5シンガポールドル、日本円で約350円。デスクで包みを開けると、豆腐や小魚、野菜がいっぱいのった雑穀米と、緑のどろりとしたソースが付いていました。ソースのふたを開けると、ハーブやミント、緑茶の香りがします。これをかけて食べる混ぜご飯のようです。こちらの料理は全般的に日本よりも油分も塩分もきついので、こういう薄味でヘルシーな料理は珍しく、それからはこの週、何度も買いに行って、呆れられてしまいました。なぜサンダー、つまりカミナリという名前が付けられているかと云うと、ハーブやミントやお茶っ葉をスリコギで擂るときのゴリゴリという音が、雷鳴に似ているからだそうです。
この料理は福建や広東など様々な中国料理のヴァリエーションの中でも、客家料理というジャンルに属します。客家とは中国民族の一派で、定住する場所を持たないことから、漢字で「きゃくのいえ」と書きます。流浪の民だけに、土地が痩せた山間部などに住まなくてはならないことも多く、そんな彼らでも手に入りやすい材料でできているのがサンダーティーライスです。その他、客家料理は、ヨントーフという豆腐と野菜・魚のすり身のおでんなど、さっぱりした料理が多いような気がします。客家はその人口こそ少ないものの、シンガポールの初代首相リー・クアンユーを始め、タイのインラック現首相、李登輝台湾元総統、ケ小平中国元首席など優秀な人物を輩出することでも知られています。そんな彼らは、客家料理という質素ながらも良質なタンパク質を中心とした食事を摂っていたがために、優秀な人物を輩出できたのではないかという仮説はちょっと想像力過多というところでしょうか。

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2012年04月14日

[日本人に宛てたエッセイ56〜南十字星から西東京へ]

西東京の皆様、今晩は。一昨年春から南国シンガポールに赴任している、心はいつまでも西東京市民、岡川です。私は現在金融アナリストとして働きながら、その仕事を通じて見えてくるアジア各地様々な横顔を、赤道直下熱帯の国からお伝えしています。
春です。日本を出国してから2度目の春がやってきました。しかしここシンガポールでは春とは名ばかりで、いつもと変わらぬ30度前後の温暖な日々が続き、夕方には時にスコールが降ります。それに対し日本の友人たちのSNSを覗くと、4月初めは毎日毎日、様々な桜の写真がアップされていました。川辺の桜、花見の桜、そして夜桜、桜吹雪。本当に日本人は桜が好きなのだと実感させてくれます。そのたくさんの桜をシンガポールの人たちにも見せてみましたが、みな大変な興味を持って画面をスクロールしていました。もちろん彼らも桜がこの季節の短い期間にだけ咲く花であり、日本人たちがその散りゆく姿を眺め愛でるのだということは知っています。そして改めて思ったのが、日本人は桜を見るためには、遠出や早起きなど少々の努力は全く苦にならないのだな、ということです。
さて一方、若いシンガポール人たちに春の週末の予定を尋ねると、口を揃えて遊びに行くところが少ないと文句を言います。それはそうです。シンガポールの面積は東京23区とほぼ同じ、遠出をするといっても限りがあります。彼らの三大娯楽はグルメとクラブとショッピング、確かにこのローテーションばかりだと飽きてしまいそうです。もちろんパスポートを持って海外に出ればいいのでしょうが、毎週毎週海外旅行という訳にもいきません。たとえ海外に出たとしても、マレーシアやインドネシア、ベトナムやタイといった近隣諸国の気候は似通っているので、あまり外国に来たという気がしないとも聞いたことがあります。私に席の隣の女性も、先日休暇を取り、家族でタイに行っていました。彼女が撮ってきた写真を見せてもらったのですが、バンコクの街角や屋台料理やホテルの部屋からは、確かにシンガポールと大きく違う季節感は感じませんでした。
そう、こういう話を聞くと、遊びに行く場所のみならず、季節というものは本当に大切な役割を果たしているのだと感じます。日本ではたとえ同じ場所に行ったとしても、それが山でも海でも、そして桜咲く土手でも、春夏秋冬全く違う顔を見せてくれます。つまり地図上の二次元の行動のみならず、季節を違えて同じ場所を訪れる時間的立体的な楽しみがあるわけです。小さい画面の桜たちは、そんな贅沢な日本の楽しみの一片を示しているのです。

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2012年04月06日

[日本人に宛てたエッセイ55〜南十字星から西東京へ]

西東京の皆様、今晩は。一昨年春からシンガポールに赴任している、心はいつまでも西東京市民、岡川です。私は現在金融アナリストとして働きながら、その仕事を通じて見えてくるアジア各地様々な横顔を、赤道直下熱帯の国からお伝えしています。
私がこの連続エッセイを始めてから1年、この間、私の主戦場である金融市場においては、あるテーマがずっと主役でした。それはギリシャの債務問題に端を発した、欧州周辺国の債務危機の問題です。しかし長きにわたったそれも昨年末より徐々に沈静化を始め、この春、いよいよ主役の座から下りようとしています。もちろん問題のすべてが解決したわけではありません。むしろ財政の緊縮化など、大変なのはこれからです。けれども解決にいたる道しるべが整備されたというところで、実は冷酷なマーケットの眼は、この問題を半分終わったものとみなしているのです。この期間、嵐が欧州方面で吹いていたものですから、実は私のいるアジア地域は、まあまあ落ち着いた日々が続きました。確かに株や債券の市場が昨年夏から秋にかけて一時動揺したことはありました。しかしおぞましきあのリーマンショックの時のように、なにもかも真っ逆さまに落ちていく、という深刻さではありませんでした。
そして現在、徐々に金融市場のメインテーマになりつつあるのは、どこあろうアジア、巨龍中国の経済減速の問題です。まさにリーマンショック時、中国は経済を減速させないがために大きく財政政策を打ち、なんとかあの危機を乗り切りました。しかし溢れたマネーは中国の不動産を急騰させ、人件費も高騰、世界中で資源価格が上昇する遠因ともなりました。そして今、徐々に足許から動揺が始まっている、いや、動揺しているのだという証拠を、金融マーケットは血眼になって見つけようとしているように感じます。中国の株式や債券の市場は、まだまだ規制が多く自由に取引できる部分が小さいものですから、中国をテーマとしたストーリーに最もビビットに反応しているのは、オーストラリアドルをはじめとしたオーストラリアのマーケットです。あの国は経済の多くを地下資源に負っており、しかも中国が最大のお得意様です。そう、オーストラリアのマーケットは中国経済を映す鏡として現在、大いに注目されているのです。もちろん私の住む東南アジアも例外ではありません。まだまだその動揺が伝わってきているわけではありませんが、中国が本当に大きな経済調整に入った場合、東南アジアも、そして我が国日本も、ギリシャの時のように対岸の火事では済まないインパクトになってしまうリスクはあります。
もちろん本当にそうなるかどうかはわかりません。しかし金融マーケットは、相応の注意をもって中国経済の行く先を見つめているのだということ、心の隅に留めておいても良いかもしれません。
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2012年04月01日

[日本人に宛てたエッセイ54〜南十字星から西東京へ]

西東京の皆様、今晩は。一昨年春からシンガポールに赴任している、心はいつまでも西東京市民、岡川です。私は現在金融アナリストとして働きながら、その仕事を通じて見えてくるアジア各地様々な横顔を、赤道直下熱帯の国からお伝えしています。
今夜は私が一緒にオフィスで働いている、シンガポールのスタッフたちのランチ事情をお話しします。シンガポールの人たちは、共働きが多いので、職場にお弁当を持ってくる人をあまり見かけません。弁当男子なんてもってのほかです。では彼らはどこでランチを摂るのかというと、見ている限り近くのフードコートにまで出かけることが多いようです。私のオフィスからも、歩いて2−3分のところにフードコートがあり、昼食時には大変混みあいます。フードコートというのは、日本にも最近増えてきているのでご存知の方も多いとは思いますが、屋台が屋内の大広間に集まったものと考えれば良いでしょうか。壁際に様々なジャンルの飲食店が並び、中央のテーブルに各自好きな店で買った食事を持ち寄るというシステムです。日本円にして1食200円から400円くらいですので、なかなか経済的です。中華系の人が多いので、やはり中華料理の店の数が一番多く、それでもみなさんよく並んでいます。その他、インド系の人向けにカレーとか、ムスリムの人のため豚肉の入っていないマレー系料理とか、なーんちゃって日本料理屋までジャンルは豊富です。日本では食べ終わった食器等自分で片づけるところが大半でしょうが、こちらのフードコートでは、みな片付けもせず、席を立ちます。フードコートには片付け担当の人がいて、自分で片付けようとすると怒られる時もあります。なぜなら、彼らは彼らで一皿片付けたらいくらという計算でお給料をもらっているので、勝手に片付けてはいけないのです。
フードコートのお店の料理は、たいてい持ち帰りができます。忙しい時、手の空いているスタッフが代表して買いに行ってくれる時もあります。お持ち帰りのことを、シンガポール英語でテイクアゥエイというのですが、手に持つの持つに包むと漢字で書いて、ターパオと中国語風に言うと、シンガポールでは一発で通じます。中国大陸でターパオと言って通じるのか、残念ながら私には判らないのですが。
先日、四半期末の忙しい夕方、スタッフ全員に日本のお弁当が配られたことがありました。彼らはターパオターパオと喜んでいました。日本食はこちらでもポピュラーなので、皆美味しそうに蓋を開けてお弁当にぱくついてます。その風景を見ていて、一瞬、日本にいるのではないかと錯覚しました。どうしてかって?みんな割り箸を普通に使っていたもんで。っていうか、お箸のことを私たち日本人は古来中国の人に教わったんですけどね。
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2012年03月24日

[日本人に宛てたエッセイ53〜南十字星から西東京へ]

西東京の皆様、今晩は。一昨年春からシンガポールに赴任している、心はいつまでも西東京市民、岡川です。私は現在金融アナリストとして働きながら、その仕事を通じて見えてくるアジア各地様々な横顔を、赤道直下熱帯の国からお伝えしています。
ご存知の方もいっぱいいらっしゃるとは思いますが、マレー半島の先っぽに浮かぶこのシンガポール島は、東京都と同じ面積、23区と同じだけの人口しか住んでいないにもかかわらず、世界中から多くのお金持ちが集まってきます。それも私たちが普段接することのないくらいの、文字通りの大金持ちが、たくさん住んでいます。
街を歩いている人の顔を見ても、その人たちが大金持ちかどうかは判る訳ありません。しかし国の自家用車抑制策により、日本で買う価格の4−5倍するにもかかわらず、道を走る高級外車の数は半端ではありません。それもランボルギーニ社のスポーツカーとか、バブル入社組の私の口からあえて言わせていただければ、スーパーカー並みの車を、そこここに見掛けることができます。
彼らの住居はまずは豪華な一軒家や高級コンドミニアムと言われていますが、そんな大金持ちしか住めない特別な地域もシンガポールには存在します。それは島全体がエンタテイメント施設で覆われたリゾートアイランド、セントーサ島の東端、セントーサコーブという超高級住宅地です。シンガポールの土地は基本的に外国人の所有は不可なのですが、このセントーサコーブだけは例外で、外国人でも土地付き住宅が購入できます。よってセレブたちの人気は上々、1区画数億円から20数億円まで、私たち庶民にはとても手が届かない価格で販売されています。
ではなぜ、大金持ちはシンガポールに集まってくるのでしょうか?もちろん治安が良く、温暖で、医療技術も高いという点もありますが、やはりそこは個人にかかる税金の問題が大きいのではないでしょうか?シンガポールには相続税も贈与税も地方税もなく、資産運用益やシンガポール国外で稼いだ源泉所得についても無税です。しかも所得税の最高税率は20%、そりゃあまあ集まってくるだろうというくらいのセレブ御一行様出血ご優待のお国です。累進課税率をきつくしてお金持ちを追い出そうとしているどこかの国とは違い、シンガポールは国家戦略としてセレブ誘致に躍起なのです。
彼らはお金持ちだけにご自宅でパーティーをなされるようで、日本人の板前さんやバーテンダーさんが、寿司を握ったりカクテルを造ったりする為に呼ばれる、という話もよく聞きます。彼らはわざわざ自分からお店にまで出かけたりなどはしないのです。
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2012年03月18日

[日本人に宛てたエッセイ52〜南十字星から西東京へ]

西東京の皆様、今晩は。一昨年春からシンガポールに赴任している、心はいつまでも西東京市民、岡川です。私は現在金融アナリストとして働きながら、その仕事を通じて見えてくるアジア各地様々な横顔を、赤道直下熱帯の国からお伝えしています。
日本のテレビで見るシンガポールの代表的映像は、最近ではマリーナ地区の極めて近代的な風景が多いと感じます。その映像には、複雑に立体交差する高速道路も映し出されます。当たり前ですが、高速道路の上では、多くの車がスピードを上げて走っています。この映像を見て、皆さんは一つ疑問を感じないでしょうか?東南アジアで最も経済発展を遂げているシンガポールは、国土が小さいのに、どうして自家用車が溢れていないのかと。私がよく出張するアジアの都市でもっとも渋滞がひどいのはジャカルタですが、バンコクもクアラルンプールもまちなかの渋滞には激しいものがあります。購買力の高いシンガポール国民は、なぜ自家用車をもっと持とうと考えないのでしょうか?
実はシンガポールも1960年代から1970年代にかけて、道の渋滞が大変激しくなりました。そのためシンガポール当局はいくつかの対策に乗り出します。まず一つ目は自家用車台数の制限です。シンガポールで車を買おうとすると、COEと呼ばれる自動車所有権証券を入札で買わなくてはいけません。これは10年間有効の証券で、中古での売却も可能です。この証券はその時々の景気状況によって発行量が変化するのが特徴です。景気が過熱すると発行量を減らし、COEの値段を上げることにより、新車の台数を制限します。逆に景気が冷え込んだら、COEの発行量を増大させ値段を下げ、新車販売を促します。渋滞抑制とともに、景気対策にもなっているという画期的なシステムです。このCOEは概ね車体価格と同じくらいするので、輸入コストも含め、シンガポールで自家用車を買おうとすると車体価格の3倍以上と大変高価なものになります。この高コストがシンガポールの自家用車抑制策の一つ目です。
第二は公共交通機関の充実です。自家用車の所有コストを上げる代わりに、公共交通機関は便利に、そして運賃は格安に設定されています。シンガポールには4本の地下鉄をベースとして、300系統を超える網の目のようなバス路線網が張り巡らされ、2万台を超えるタクシーが走っています。私ももちろん自家用車を保有してはいませんが、ほとんど困ることはありませんし、タクシーに乗っても渋滞に悩まされることもほとんどありません。もちろん国が小さいからこそ達成しえたシステムなのかもしれませんが、今後多くの新興国にとって一部でも倣うべき交通政策に違いありません。
posted by ハンス岡川 at 17:07| Comment(0) | TrackBack(0) | アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする